一般診療
くっせついじょう
屈折異常
- 主な症状
- 見えにくい、ぼやける
- 疾患対象
- 屈折異常(近視、遠視、乱視、老眼)
近視
目に入ってきた光は、角膜と水晶体を通り屈折することで網膜に像を映し出しています。水晶体の厚みを調節することでピントを合わせますが、近視とは角膜や水晶体の屈折力が強い、もしくは眼球が大きい(眼軸が長い)ために、網膜の手前で焦点を結んでしまうためにピントが合わない状態です。遠くのものがぼやけて見える、かすむ、二重に見えるなどの症状があります。
原因と治療
近視の原因には遺伝的な要素と環境が関係すると考えられています。親が近視の場合には子どもが近視になる可能性は高くなりますし、パソコンやスマートフォン、テレビなどを長時間見ることは目に負担がかかるため良くないと考えられています。一般的には眼鏡やコンタクトレンズで矯正しますがレーシックや眼内レンズなどの手術を行ったり、一時的な視力低下には点眼薬を用いた治療を行うこともあります。
遠視
近視とは逆に網膜の後方でピントが合ってしまう状態が遠視となります。遠くのものを見るときも近くのものを見るときもピントを合わせるための力(調整力)を必要としますので、目が疲れやすく肩こりや頭痛を伴う人も少なくありません。子どもの遠視の場合、度が強くなると内斜視になったり弱視になったりする可能性があるので注意が必要です。
原因と治療
子どもの遠視の場合は目の大きさ(眼軸が短いこと)が原因となっている場合もあり、成長に伴って眼軸が長くなることで自然に解消されるケースもあります。遠視自体を治療する方法はありませんので、生活に支障が出る場合の対処法は眼鏡・コンタクトレンズによって視力矯正することが一般的な対処法となります。
乱視
角膜や水晶体のカーブが振眼で均一でないことから、屈折が強い方向と弱い方向が発生してしまい、一点に結像できない状態を乱視といいます。近くも遠くも見えづらくなる視力障害や片目で見ても物が二重に見える単眼複視などの症状があります。一定の角度で規則的に歪んでいる正乱視と、円錐角膜や翼状片による角膜表面の不規則な歪みや水晶体の亜脱臼など眼科的な疾患が原因となる不正乱視に分けられます。
原因と治療
正乱視の場合は円柱レンズの眼鏡・コンタクトレンズによって歪みが強い方向からの光の屈折を調整することで補正します。角膜が原因の不正乱視にはハードコンタクトレンズを用いて矯正することが一般的ですが、角膜の疾患が重度の場合や表面に傷がある場合は角膜移植などの治療を行う必要があります。水晶体が原因の不正乱視はコンタクトでの矯正は難しく、原因となっている水晶体への治療を検討する必要があります。
老視(老眼)
遠くを見るときにはピントが合いやすいが、近くが見えづらくなる状態を老視といいます。「近視の人は老眼にならない」という話を聞くこともありますが、これはもともと近くに焦点が合いやすいので老視の症状を感じにくいことから言われるようになったものと考えられます。40歳前後から始まるといわれ、「手元の文字が見えづらい」「近くのものがぼやける」などの自覚症状が一般的です。
原因と治療
目は水晶体の厚みを変えることで光の屈折を調整して焦点を合わせています。老視とは水晶体の弾力性が加齢に伴って減少することにより、屈折を調整する調節力が弱まっている状態です。足りなくなったピントの調節力を補うために近用眼鏡や遠近両用眼鏡・コンタクトレンズによって強制する対処法が一般的です。
がいがんぶしっかん
外眼部疾患(麦粒腫(ものもらい)や眼瞼炎など)
- 主な症状
- まぶたが腫れる
- 疾患対象
- 麦粒腫(ものもらい)、霰粒腫、眼瞼炎、眼瞼下垂、睫毛乱生
麦粒腫(ものもらい)
まぶたの一部が赤く腫れて、まばたきしたり指で押したりすると痛みがあります。目がかゆい・目が赤い・ゴロゴロするなどの症状を伴うこともあります。化膿が進むと腫れた部分が破れて膿が出ることがあります。膿が出てしまえば回復に向かうことが多いですが、まれに重症化することもあります。地域によっては「めいぼ」や「めばちこ」などと呼ばれることもあります。
原因と治療
汚れた手で目を触るなどした際に、まぶたにある汗腺や毛穴から細菌が感染することが原因となります。治療には抗菌点眼薬や抗菌眼軟膏を使用し、ほとんどの場合は1~2週間程度で完治します。症状が重い場合は抗生剤を内服したり小さな切開を行って膿を出すこともあります。他人に感染する病気ではありませんが、汚れた手で幹部を触ると回復が遅れたり、完治しても再発したりする場合があるので、不必要に患部を触らないことが大切です。
けつまくしっかん
結膜疾患
- 主な症状
- 眼がかゆい 眼が赤い
- 疾患対象
- ウイルス性結膜炎(はやり目)、アレルギー性結膜炎、細菌性結膜炎、結膜下出血、翼状片、結膜異物
結膜とはまぶたの裏側から眼球の白目の部分を覆っている半透明の膜で、粘液や涙を分泌してさまざまな刺激から眼球を護る役割を果たしています。結膜の病気で眼科を受診される患者様は多く、一般的に目のかゆみや赤みなどの症状がみられます。
結膜炎
細菌やウイルス感染、アレルギー、ごみやほこりなどで結膜が炎症を起こしてしまうのが結膜炎です。感染性の結膜炎の中でも人にうつりやすいウイルス性結膜炎は「はやり目」と呼ばれ、流行性角結膜炎、咽頭結膜熱、急性出血性結膜炎の3つがあります。目の充血や白目・まぶたが赤くなる、目やにや涙が出る、ゴロゴロする違和感があるなどの症状がみられます。
原因と治療
ウイルス性結膜炎の原因として多いのはアデノウイルスです。感染力が非常に強いのでタオルを家族と共用しないこと、入浴は最後にすること、できるだけ目を触らないことなど、日常生活の中で他人に伝染させないよう注意が必要です。子どもの場合は医師の許可が下りるまで登園・登校することはできません。細菌性の場合は抗生剤を用いて治療しますが、ウイルス性の場合は対症療法で症状を和らげる治療を行うことになります。
結膜下出血
結膜の下の細い血管が破れて出血し、白目が真っ赤に染まります。多くの場合、痛みはありませんが異物感を感じることもあります。痛みや目やになどの症状を伴っている場合は単純な結膜下出血ではない可能性がありますので、眼科を受診してください。
原因と治療
目を打ったりこすったりした際の外傷や、ゴーグルなどで目の周りを過度に圧迫することが原因となりますが、この他にもしゃみやせき、月経、飲酒が原因となることもあります。出血は自然に吸収されるため特別な治療は必要ありませんが、目に外傷を受けた場合や頻繁に繰り返す場合はキズが入っていたり他の病気が疑われるため眼科を受診することをおすすめします。
かくまくしっかん
角膜疾患
- 主な症状
- 目が乾く、目が痛い、目が疲れる
- 疾患対象
- 角膜炎・角膜潰瘍・角膜びらん・角膜異物・ドライアイ・水疱性角膜症
一般的に黒目と呼ばれている部分が角膜です。5層の膜によって構成されておりどの層が傷んでも視力低下につながりますが、より深い層が傷むほど永続的な視力障害の原因となります。また、病気などで角膜のカーブや厚みが替わることでも視力に影響を及ぼします。
ドライアイ
涙の量の減少や成分の変化により、目の乾きや異物感、目の疲れを感じるようになる状態をドライアイといいます。乾燥感だけでなく痛みや異物感、眼精疲労など症状はさまざまです。オフィスワーカーの3人に1人がドライアイという報告もあり、年々増加傾向にあります。
治療
加齢による涙の量の減少、パソコンやスマートフォンなどを見続けることによるまばたきの減少、エアコンによる乾燥、コンタクトレンズなどが原因として挙げられます。症状に応じたドライアイ用の点眼薬を使用する治療が一般的です。
すいしょうたいしっかん
水晶体疾患(白内障など)
- 主な症状
- 物がかすんでみえる、ぼやける
- 疾患対象
- 白内障、後発白内障、水晶体(亜)脱臼
ぶどうまくしっかん
ぶどう膜疾患
- 主な症状
- 物がかすんでみえる 目が赤い
- 疾患対象
- ぶどう膜炎(ベーチェット病、原田病、サルコイドーシス)
ぶどう膜
瞳孔の大きさを調整する虹彩、水晶体の厚さを変えてピントを調節する毛様体、網膜に栄養を届ける役目をする脈絡膜という眼球内部の三つの組織を総称してぶどう膜と呼びます。色が果物のぶどうに似ていることからこう呼ばれますが、ここに何らかの原因で炎症が起きた状態がぶどう膜炎です。網膜など隣接する他の眼組織にも炎症が広がって視力の低下を引き起こす可能性があり、失明に至るケースもあります。子どもから高齢者まで、幅広い年齢層に起こる病気です。
原因
免疫異常が主な原因となる非感染性ぶどう膜炎と、病原菌・ウイルスの感染が原因となる感染性ぶどう膜炎に大別されます。非感染性ぶどう膜炎は「3大ぶどう膜炎」と呼ばれるベーチェット病・サルコイドーシス・原田病に加えて、糖尿病や膠原病などが原因で起こることもあります。感染性ぶどう膜炎はヘルペス属のウイルスをはじめ、細菌・真菌なども原因となります。
症状
目がかすんだり光をまぶしく感じたり、あるいはゴミや虫が飛んでいるように見える飛蚊症が症状として現れます。炎症が強い場合は目が充血し、目の痛みや頭痛を伴うこともあります。目の充血は結膜炎でも起こりますが、ぶどう膜炎が原因の場合は目やにが出ないのが特徴です。
治療
細菌などが原因の場合はその病原生物に有効な抗菌薬等を使用しますが、基本的には薬を使用して炎症を抑える治療が中心となります。炎症の程度によってステロイドの点眼薬を使用したり、目の周囲に注射したり内服や点滴を行うこともあります。症状が改善したり悪化したりを繰り返して長引くこともある疾患ですので、定期的に通院して経過を観察することが重要です。
もうまくしょうしたいしっかん
網膜硝子体疾患
- 主な症状
- 見えにくい、ゆがむ、視野がかける
- 疾患対象
- 糖尿病網膜症、加齢黄斑変性症、網膜裂孔、網膜剥離、網膜静脈閉塞症、黄斑円孔、黄斑上膜、網膜色素変性症、硝子体出血
糖尿病網膜症
糖尿病の3大合併症の一つで、日本における成人の失明原因の上位となっている病気です。網膜には多くの毛細血管がありますが、血液中の糖が多い糖尿病の場合は血管が詰まったり出血を起こしてしまうことがあります。これが進行すると視力低下の原因となり、網膜剥離を併発したり失明に至ることもあります。
治療
かなり進行するまで自覚症状がない場合もあり、重症化してから受診したものの大幅に視力が低下してしまう方も少なくありません。「まだ見えるから大丈夫」と自己判断せず、定期的な眼科受診と血糖値コントロールすることで進行を抑えることができます。症状が進行してしまった場合には網膜光凝固術や硝子体手術などの外科治療を行いますが、視力の改善は難しいケースが多いです。
加齢黄斑変性症
網膜の中心にあり、視力に関わる重要な部位である黄斑が加齢に伴って傷み視力低下をきたす疾患です。欧米では成人の失明原因の1位となっており、日本においても近年増加傾向にあります。その名の通り高齢者になるほど多く、物が歪んで見えたり視野の中心部が欠けて見えたりすることがあります。
原因と治療
大きく分けて萎縮型と滲出型の2種類あり、萎縮型には明確な治療法は確立されていません。滲出型は新生血管という細く破れやすい血管が増えることで症状が進行しますので、この血管の成長を抑える抗VEGF薬を硝子体に注射する薬物治療やレーザーを照射して新生血管を広げないようにする光線力学療法を行います。
網膜裂孔
網膜の一部が裂けたり、薄くなって孔が開いたりしている状態を網膜裂孔といいます。網膜には痛覚がないため痛みはなく、初期症状ではほとんど自覚症状がありません。虫やゴミが飛んでいるように見える飛蚊症や光が当たっていないのに光を感じる光視症などの自覚症状が代表的ですが、悪化すると網膜剝離に進行しますので、早急に治療する必要があります。
治療
加齢に伴うものや強度の近視が原因となるもの以外に、スポーツなどで目や頭部に強い衝撃を受けたことが原因となるケースもあります。眼底検査で網膜裂孔が見つかった場合には網膜剥離に進行することを抑えるため、レーザーを使用した網膜光凝固術で硝子体の水分が網膜に入り込むことを防ぎます。
網膜剥離
カメラにおけるフィルムの役割を持つ網膜が眼底から剥がれてしまい、視力が低下する疾患です。加齢によって硝子体が液化していく際に、収縮していく硝子体に引っ張られるように網膜が剥がれてしまうケースや網膜裂孔・糖尿病網膜症の進行によって発症するケースがあります。痛みを伴わないため進行に気づきにくいですが、飛蚊症や光視症などの前兆が現れることがあります。病状が進行すると視野の欠損や視力の低下が起こることもあります。
治療
網膜の中心部である黄斑まで剥離した場合には急激に視力が低下し、失明に至ることもあるため早急に治療が必要です。網膜が裂けている状態であれば、レーザーによる網膜光凝固術で網膜が剥がれにくくなるように処置します。剥がれた網膜を元の位置に固定するために硝子体手術や強膜バックリング法など、症状に応じた手術を行います。
網膜色素変性症
網膜に異常な色素沈着が起こる病気を総称して網膜色素変性症といいます。暗いところでものが見えにくい夜盲、視野狭窄、視力低下の3つが主な症状です。最初に夜盲を発症し、進行に従って周辺の視野が狭くなって物にぶつかりやすくなったり物が消えたり見えたりするという症状が現れます。
治療
遺伝的な要因で発症することの多い進行性の病気ですので、現時点では根本的な治療法は確立されていません。ただし、黄斑浮腫や白内障を併発することが多いため、そのような合併症に対する治療を行うことがあります。
ししんけいしっかん
視神経疾患
- 主な症状
- 視野がかけて見える
- 疾患対象
- 視神経炎、緑内障
その他眼科診療
- 主な症状
- 飛蚊症・眼精疲労(疲れ目)・花粉症
飛蚊症
視界の中に蚊が飛んでいるように見える症状のことで、糸くずや黒い点のようなものが見えることもあります。形や大きさはさまざまで、視線を動かすと一緒に付いてくるように見えます。
原因と治療
硝子体の濁りや加齢、近視などが原因となる生理的飛蚊症の場合は、症状が進行しない限りはさほど気にしなくても大丈夫です。網膜裂孔や網膜剝離、ぶどう膜炎などが原因となっている病的飛蚊症の場合は早急な治療が必要となりますので、急に飛蚊症が現れた場合や見える頻度・数が増加している場合には眼科医に相談してください。
眼精疲労(疲れ目)
目の疲れや痛み、まぶしさ、充血といった症状が長く続き、休息や睡眠をとっても回復しない状態を眼精疲労といいます。症状は目だけでなく肩こり・首こり・頭痛・吐き気などの全身症状が出る場合もあります。
原因と治療
白内障や緑内障などの目の疾患だけが原因でなく、度の合わない眼鏡・コンタクトレンズの使用や、長時間パソコンやスマートフォンを使用することも原因となります。疾患が原因の場合は疾患に合わせた治療を行いますが、疲労の蓄積の場合に特効薬はありません。ビタミンを配合した点眼薬が有効な場合もありますが、作業する際に適度な休憩を挟む、ストレッチで身体をほぐす、正しい姿勢を心がけるなどに気をつけましょう。
メガネ・コンタクト処方
眼鏡作成・コンタクトレンズの購入について
コンタクトレンズを購入する際だけでなく、眼鏡を作成する際にも眼科を受診することが効果的です。正確な視力が分かるだけでなく、目に疾患がないか、結膜・角膜の状態、レンズの度数など詳細に調べて処方箋を発行することができます。自分の目に合っていない眼鏡・コンタクトレンズを使用することで、目の病気の原因となったり逆に視力の低下につながったりする危険性もあります。初めて眼鏡を作成される方や中学生以下の子どもの場合は、眼科を受診して目の状態に合った眼鏡・コンタクトレンズを使用することを推奨します。